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「戦略読書日記」(楠木建著) を読んで

500ページ近くある本で、普段なら決して開くことのないぐらい重いページだったもののお盆休み中ということで一気読み。やはり楠木さんの本は最高に面白い。この人が本の中で語っている「著者と対話できる本」というのがまさしくこれにあたるんだなと、最初から最後までしっかり楠木さんと対話させて貰った。そしてよどみなく衝撃を受けた。

まず何よりいいなと思った点は、全てに対して「戦略ストーリー」が言及されている。時にマニアックな視点が加わりつつも、「良い戦略」とは何かをあらゆる視点で、あらゆる事例であぶりだされている。故に、楠木さんが考える「良い戦略」が何かがビンビン伝わってくるのだ。ジャンルはビジネスだけではなく、ダイエットや映画や投資など多岐に跨る。だからこそ「良い戦略」の本質が余計に伝わってくる。なぜなら「良い戦略」の本質にはジャンルは関係ないからだ。

そして書評というスタンスを取っているのではなく、とにかく自分が感化された部分、衝撃を受けた部分を列挙しまくっている。まるで自分がその紹介してくれる本を読んでいるかのような空間を演出してくれる。結局は楠木さんが気に入った部分を紹介しているただの自己満足の本なんだろうけど、それでも思わず引き込まれてしまうようなストーリーを追っていくと最終的に楠木ワールドの中にいるのだ。

この本を読んで自分は、やっぱり経営者になりたいなと思った。楠木さん曰く、いい戦略を作るにはスキルではなくセンスだと。それはまるで、モテるためにスキルを磨いたとしても、結局モテる男は「センスがいい」というのと同じように、経営にもセンスが必要だと言っている。これには賛同せざるをえない。なぜかモテるやつ、なぜかモテないやつ。きっと誰もがそういう感情や思いで他人を見たことがあるはずだ。

会社を経営したことのない自分にはその言葉の本当の意味は分からないが、それでもチームを任されていた自分は(当時はチームを一つの会社と見立ててチーム運営していた)、販管費、人件費、売上、いろんな数字を追いかけて、チームが勝利するためにいろんな戦略を練り、そして長期的な視点で人を育てて、上手くいかないことがほとんどだけど、それでも仲間の成長や描いたストーリー通りに行った時の爽快さ、気持ちよさといったら、もうそれは何物にも代えがたいやりがいになり、その頃の経験は一生の宝だと今でも胸を張って言い切れる。

そんなちょっぴりもちょっぴり、経営まがいなことを経験したことのある自分にとっても分かるぐらい、いい戦略を作るためのポイントをこれでもかというぐらい上げている。そのどれもがいちいち腑に落ちるし、あの時自分が経験した「やりがい」を言語化してくれている。だからこそ自分はストーリーを作る側に回りたいと改めて思った。「自分が夢中にならなければならない」「点ではなく全て選で繋がったストーリーである必要がある」「抽象化された原理原則を忠実に守る必要がある」「抽象と具体をどれだけ高速に多く反復するかが肝である」などなど、もはやここで語ることほど陳腐なことはないので、詳細は本を読んで頂くしかないが、とにかく様々な事例から本質をあぶりだし抽象化することで強烈なインパクトを放っているんだ、この楠木さんという人は。

この人はさんざん自分は怠惰とか、やる気がないとか、目標もないとか言っておきながら、きちんと自分の好きなことを好きなようにやって楽しそうに過ごしている姿がはっきりと目に浮かぶ。だから憎らしい。でもそれでいて自分のスタンスを確立していて明らかに楽しそうに日々を過ごしていてスカッとしている。

「好きこそものの上手なれ。もし自分が夢中になれること知っているなら、それをやったらいいじゃない。好きだから夢中になれる。夢中になればなるほどストーリーに磨きがかかる。個性を発揮すればするほどストーリーのインパクトは強くなる。いつかきっと良い戦略ストーリーを見せてくれよ。」

寝ながらポテトチップスをほおばってそう言ってくる姿が目に浮かぶ。

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